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豊かな生活を”デザイナー”として大磯から発信、
AUI-AŌ Design。
古くて、新しい「活版印刷」の魅力が再燃している。
コーヒーフィルターのようなメッセージカードや、昔懐かしい牛乳瓶の「紙ふた」のシール。独自のフィルターを通して“ひとひねり”加えたユニークなデザインを大磯から発信している、AUI-AŌ Design佐藤 一樹さん・佐藤 桃子さんご夫妻。一樹さんは、幼少期から絵画教室に通い、デザインやイラストに早い時期から興味を抱いていたという。
「将来は漠然とデザイン関係に進みたいと思っていたので、進路は早い段階から明確でしたね。父が不動産業を経営していたこともあって美術大学の建築科に進んだんですけど、あんまりしっくりこなくて。在学中にイラストの個展を開いたり、チームでフリーペーパーを作ったりしていました。」
紆余曲折ありながらも2010年まで企業のインハウスデザイナーとして勤務。翌2011年3月に友人と会社を立ち上げ、準備を進めている最中に東日本大震災にあう。
「状況的に前に進むこともできず、全てが白紙に戻ってしまって。精神状態が大きく仕事に影響する商売なので、無気力になってしまいましたね。」
そんな中、桃子さんに大磯港で毎月開催されている「大磯市」に出店することを勧められ、紙からこだわったレターセットを自分たちの手で販売したのがAUI-AŌ Design立ち上げのきっかけとなった。
デザイナーとして文字のあり方を深く追求していくうちに、「活版印刷」という表現方法に出会う。
活版印刷はすべての印刷技術のルーツ。ルネサンス三大発明のひとつで、西欧諸国が世界に躍進するきっかけになった程の技術だ。それまで手書きだった聖書を効率よく大量発行するために、ワイン用の葡萄をプレスする機械を改良して木版で作られたのが始まりだという。
「単純だからこそ長く残っている技術ですよね。活版印刷はひとつひとつ金属の文字を並べて印刷するのですが、印刷機で使用する文字の種は、鋳込み(いこみ)で職人さんが手で掘ってくれています。」
1本1本活字版に組んだ文字の主成分は鉛。柔らかい素材のため、印刷の回数を重ねるごとにだんだん形が変化していく。ちょっとずれていたり、歪んだり、”全く同じ文字”というものがない。目に優しく読み易さに繋り、活版印刷最大の魅力となっている。
「昔の小説は読みやすいってよく言われますけど、文字を追っていて飽きないんですね。実際に素人さんが見るとデジタルで打ち込まれた文字も活版印刷も違いが分からないと思うんですけど、圧をかけて少し凸凹にへこませることが活版印刷の個性であり、ひとつの良さに繋がっています。」
「グラフィックデザイナーとしても”ひとひねり”」
一度聞いたら忘れられない、インパクトのある屋号、AUI-AŌ Design。
「デザイン会社って、デザイナーの名前をとって『佐藤一樹デザイン事務所』とかってよく耳にしますよね。自社ブランドの作品は全部”ひとひねり入れる”ことをコンセプトにしているので、自分の名前を前面に出すデザインってどうなのかなっていう思いがすごく強くて。でも文字には拘りたい思いもあるので、KAZUKI SATOの母音を取って”AUI AO”と名付けました。」
デザイナーは大きく2つに分けられると一樹さんは言う。作家性を持ったデザイナーと、作家性を消しているデザイナー。
「僕はどちらかというと作家性を消す方が性に合っていて、まさに事務所名と同じです。その人のベストなものを僕が肩代わりして具現化していく。クライアントさんが何を求めていて、それを僕がどう表現してあげると最大限のコラボになるかという感覚が一番大切だと思っています。そのはざまでフラストレーションになる部分を消化するために、自社ブランド立ち上げているっていうのはありますね。」
桃子さんは服飾の専門学校を卒業後、ユニフォームのメーカーに勤め、サラリーマンをしながらデザイン事務所を立ち上げた。
「主にステーショナリー系の雑貨の製作をしています。デザインには自分の趣味とか、その時好きなものを思う存分詰め込むタイプ。身の回り生活の中とか、みて感じたものを掛け合わせてみたり。トレインコースターという作品は、当時スタンプ帳を持ち歩くくらい電車が好きだったので、どうしても作りたくて。自分たちで作っている良さって、小回りが効くので作りたいと思ったらすぐ行動して自分の手で売ってお客さんの反応が見られるところにありますよね。想いを込めて自己完結できるところが、二人で作っている良さだと思います。」
「何をデザインし、何をデザインしないか」
『何をデザインし、何をデザインしないか』を見極め、デザインに真摯に向き合っているAUI-AŌ Design。一樹さんは何を大切にデザインし続けているのか。
「デザインって歴史あるものをうまく利用したり、心理学を応用したり、いままで蓄積されてきたものをうまく使って新しいものを生み出すものだと思っていて。新しくするためだとしても、全て壊してしまうと良くないんですよ。」残さなくてはいけないところは残し、勇気を持ってあえて変えない。歴史あるデザインへのリスペクトとして大切にしているそうだ。
「僕ら個人がやっていることって、社会の一部でしか無いじゃないですか。そういうものをまとめて発信できるのが2416MARKETの力強さだと思うんですよ。大磯に住んでいる目的の一つとしては、豊かな暮らしをしたいということです。『なんでもいいや』じゃなくて、器ひとつとってもこの器でご飯食べたらおいしいよね、だったり。水のかさが増すように、みんなで生活基準を上げて豊かになっていけたらいいですよね。2416MARKETがそういう発信をしてくれると僕たちももっと住みやすくなるし、多分みんなが幸せって思えるんだと思います。」
AUI-AŌ Design
「大磯市」に参加する若手クリエイター約30組の作品が並ぶ、「つきやま Arts & Crafts」。
まさに「大磯市」がきっかけで地元の人やクリエイターたちの出会いの場、コミュニティの役割を果たしている。
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神奈川県中郡大磯町大磯1156 つきやま
IG: @auiao_design